海岸通のオフィス Office in Kaigandori

築90年になるビルの一角にあるオフィスの改装。 竣工当時から残るプラスター塗壁やモールディングを保存するため、ほとんど既存の状態を維持している。 唯一大きく変えたのは、ビルの共用部にある腰壁の体験をオフィスにも引き込むため、新しく腰壁を設けたことである。 腰壁の高さは共用部に合わせているが、オフィスの特性に合わせて少し扱い方を変えている。 腰壁は基本的に壁面を保護するためのものであるが、単にペンキで塗り分けるだけでは既存のプラスター塗りの壁が事務椅子などの衝突によって剥がれ落ちてしまう。そこで、白色の水性ペンキに六甲の和紙を混ぜ込み、左官材のように粘り気のある塗料をつくった。それをコテで塗り固めることで、滑らかな凹凸のある硬質な腰壁面をつくった。 色は彩度の低い事務機器の色調に合わせて、共用部の濃緑よりもやや明るい薄緑としている。薄緑は和紙に含まれる土の色である。 また、腰壁の見切り材となるチェアレールは、エントランスではハンガーラックとして、給湯室ではカウンターテーブルとして、会議室ではホワイトボードとして使えるように、奥行きを変えている。 こうして新しく設けた薄緑の腰壁によって、事務機器が密集して雑然となりがちなオフィスの風景を囲い込んだ。腰壁から上には左官による柔らかな肌合いを持つ既存のプラスター塗壁を残し、オフィス全体を明るく照らしている。
用途:事務所|構造:RC造|延床面積:221.60 m2|施工:良品住宅株式会社|特殊塗装:ADCアート   




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