問屋町の大掃除

金沢市問屋町にあるギャラリーに小さな広場を作った。
問屋町は1966年に問屋組合によって造られた町である。古くから農地であった湿地帯にはアスファルトが敷かれ、4車線の大通り沿いに鉄筋コンクリート造の長屋が建ち並ぶ近代的な町並みが形成されている。高度経済成長の波に乗り長屋への増築や新団地の建設が相次ぎ、町は急速に肥大化したものの、流通業態が大きく変化した90年代以降は空室が増え、現在は不動産ストックの再生や活用が新たな話題となっている。
2010年からギャラリーが使用している元印刷工場の長屋の背面にも増築棟があり、軽量鉄骨を組み合わせた骨組みや刷版を再利用した屋根などからは、内部空間を拡張し成長を続けてきた近代的な勢いが感じられる。ギャラリーからは屋外での作業や展示を行うため駐車場に新しく屋根を架けるよう依頼されたが、これ以上内部空間を拡張する必要は無いように感じられた。
そこで、高密化した現状を「地」として捉え、「図」を描くように既にあるものを取り除きながら、屋外空間を拡張していった。
まずは増築棟に散らかっていた道具を整理し、1階部分の外壁を取り払い屋外へと変えた。2階のボリュームを屋根へと見立て、屋根下に吹き込む雨水を浸透させるため土間の四周に溝を切り、土を掘り起した。溝には付近で採れる苔や雑草を移植して流土を防止している。風化して骨材がゴツゴツと露出していた土間コンクリートは絨毯のように滑らかになるまで研磨し、直接地面に座れるようにした。片隅に置かれていたコンクリートブロック造の物置は高さ1mで切り飛ばし、カウンターへと変えた。
余剰となった空間を取り払いながら既にあるものに身体的な寸法や新しい役割を与える。急速に成長し続けてきた問屋町に人や生物がまとわりつく小さなスケールを取り戻し、ゆったりと草木が育ち木漏れ日が移ろう静かな屋外環境を作った。

所在地:石川県金沢市|延床面積:50.80 m2|構造:鉄骨造|用途:広場|監修:坂本英之 中瀬康志 真鍋淳朗|庭:中瀬康志|設計監理:山本周 小林栄範|施工:夢工場 ウィルビー株式会社|写真:鈴木竜一朗|竣工:2020年3月




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